要 望 書

(救急救命士法における特定行為等の制限の見直しについて)

 当地新潟県長岡市は、人口約19万人、医師数約430名、病院数10、うち3病院がいわゆる大病院であり、県内ではかなり恵まれた医療環境にあると言えます。このような医療環境のもと、当医師会では早くから市、消防当局と密接な連繋を図り、救急医療体制を構築してまいりました。

 総務省消防庁を中心に、現在、救急業務における全国的なメディカルコントロール体制の確立が進められておりますが、当市では消防本部・医療機関・当医師会による定期的な会合など緊密な連携により、救急救命士法が施行される以前から既に当市におけるメディカルコントロール体制は確立されていたといっても過言ではありません。その後も、この優れた連携により更に最善な体制づくりへと努力してまいりました。また、救急隊員の病院研修はもちろんのこと、救急隊員と現場医師との自発的な研究会も行われるなど、当市における救急隊員のレベルはかなり高度なものと自負するまでに至っております。

 先般、当市においても救急救命士が気管内挿管を行っていた事実が報告・公表されましたが、この一連の行為が事故もなく行われましたのも、充分なメディカルコントロール体制下にあったからと考えております。

 確かに法は尊守しなければならないことは、誰もが十分承知していることであります。ただし、死の淵に引きずり込まれようとしている傷病者に相対したとき、法を超えても傷病者に最善を尽くしたいという救急救命士の「使命感」が生ずるのは当然のことと言えます。

 識者の言われるように、当職もこの気管内挿管という手技が、救急救命士であるなら一律に認められてよいとは考えておりません。その前提として、十分な修練と地元医療機関の相互信頼と支援体制、すなわち「メディカルコントロール体制」の確立が不可欠であると考えます。それと同時に、市民向けのCPRなど応急手当講習を積み重ね、有機的なバイスタンダーの育成を図らなければ真の救急救命の実効は上がりません。ちなみに当市では、消防本部や病院が中心となり、毎年5500人前後の一般市民を対象に応急処置の講習が行われております。

 現在のところ、救急救命士の特定行為の制限緩和について、日本医師会をはじめ厚生労働省、総務省消防庁は、それぞれの立場から考え方が異なっているように聞いております。しかしながら、立場は違っても「国民の生命を守る」という方向は同じであるはずです。

 昨今の報道によりますと、厚生労働大臣も救急救命士の行う特定行為の緩和について、前向きに検討を行う旨発言されたとのことであります。どうぞ、日本医師会におかれましても、助けを求める目前の傷病者に最善の処置をするという観点から、一定条件下での救急救命士の特定行為の拡大について、その早期実現に強い働きかけをされますようお願い申し上げます。

 なお、この要望書は当医師会理事会の総意であり、全理事連名のもとに提出するものであります。

 

   日本医師会長

    坪 井 栄 孝 様

平成 14年 4月 19日    

  新潟県長岡市医師会     

   会 長 斎 藤 良 司  

   副会長 大 貫 啓 三  

   副会長 佐々木 公 一  

   理 事 江 部 達 夫  

   理 事 田 島 健 三  

   理 事 小 林 眞紀子  

   理 事 立 川 厚太郎  

   理 事 石 川   忍  

   理 事 富 所   隆  

   理 事 春 谷 重 孝  

   理 事 太 田   裕  

   理 事 長 尾 政之助