●医療機関以外の高齢者介護・障害者介護の現場等において判断に疑義が生じることの多い行為であって原則として「医行為」ではないと考えられるもの(平成17年7月26日付け医政発第0726005号厚生労働省医政局長通知)

1.水銀体温計・電子体温計により腋下で体温を計測すること、及び耳式電子体温計により外耳道で体温を測定すること。

2.自動血圧測定器により血圧を測定すること。

3.新生児以外の者であって入院加療の必要がない者に対して、動脈血酸素飽和度を測定するため、パルスオキシメーターを装着すること。

4.軽微な切り傷、擦り傷、やけど等について、専門的な判断や技術を必要としない処置をすること。(汚物で汚れたガーゼの交換を含む)

5.患者の状態が以下の3条件を満たしていることを医師、歯科医師又ほ看護職員が確認し、これらの免許を有しない者による医薬品の使用の介助ができることを本人又は家族に伝えている場合に、事前の本人又は家族の具体的な依頼に基づき、医師の処方を受け、あらかじめ薬袋等により患者ごとに区分し授与された医薬品について、医師又は歯科医師の処方及び薬剤師の服薬指導の上、看護職員の保健指導・助言を遵守した医薬品の使用を介助すること。具体的には、皮膚への軟膏の塗布(褥瘡の処置を除く。)、皮膚への湿布の貼付、点眼薬の点眼、一包化された内用薬の内服(舌下錠の使用も含む)、肛門からの坐薬挿入又は鼻腔粘膜への薬剤噴霧を介助すること。

□ 患者が入院・入所して治療する必要がなく容態が安定していること。
□ 副作用の危険性や投薬量の調整等のため、医師又は看護職員による連続的な容態の経過観察が必要である場合ではないこと。
□ 内用薬については誤嚥の可能性、坐薬については肛門からの出血の可能性など、当該医薬品の使用の方法そのものについて専門的な配慮が必要な場合ではないこと。

注1 以下に掲げる行為も、原則として、医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の規制の対象とする必要がないものであると考えられる。

(1)爪そのものに異常がなく、爪の周囲の皮膚にも化膿や炎症がなく、かつ、糖尿病等の疾患に伴う専門的な管理が必要でない場合に、その爪を爪切りで切ること及び爪ヤスリでやすりがけすること。

(2)重度の歯周病等がない場合の日常的な口腔内の刷掃・清拭において、歯ブラシや綿棒又は巻き綿子などを用いて、歯、口腔粘膜、舌に付着している汚れを取り除き、清潔にすること。

(3)耳垢を除去すること。(耳垢塞栓の除去を除く)

(4)ストマ装具のパウチにたまった排泄物を捨てること。(肌に接着したパウチの取り替えを除く。)

(5)自己導尿を補助するため、カテーテルの準備、体位の保持などを行うこと。
※ 平成16年10月22日付け16国文科初第43号文部科学省初等中等局長通知の別添1の追記II「非医療関係者の教員が医療行為を実施する上で必要であると考えられる条件」に掲げられた諸条件を満たす必要はない。

(6)市販のディスポーザブルグリセリン浣腸器を用いて浣腸すること。
※ 浣腸器は、挿入部の長さが5から6センチメートル程度以内、グリセリン濃度50%、成人用の場合で40グラム程度以下、6歳から12歳未満の小児用の場合で20グラム程度以下、1歳から6歳未満の幼児用の場合で10グラム程度以下の容量のもの。

注2 上記1から5まで及び注1に掲げる行為は、原則として医行為又は医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の規制の対象とする必要があるものでないと考えられるものであるが、病状が不安定であること等により専門的な管理が必要な場合には、医行為であるとされる場合もあり得る。このため、介護サービス事業者等はサービス担当者会議の開催時等に、必要に応じて、医師、歯科医師又は看護職員に対して、そうした専門的な管理が必要な状態であるかどうか確認することが考えられる。さらに、病状の急変が生じた場合、その他必要な場合は、医師、歯科医師又は看護職員に連絡を行う等の必要な措置を速やかに講じる必要がある。
 また、上記1から3までに掲げる行為によって測定された数値を基に投薬の要否など医学的な判断を行うことは医行為であり、事前に示された数値の範囲外の異常値が測定された場合には医師、歯科医師又は看護職員に報告するべきものである。

注3 上記1から5まで及び注1に掲げる行為は原則として医行為又は医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の規制の対象とする必要があるものではないと考えられるものであるが、業として行う場合には実施者に対して一定の研修や訓練が行われることが望ましいことは当然であり、介護サービス等の場で就労する者の研修の必要性を否定するものではない。
 また、介護サービスの事業者等は、事業遂行上、安全にこれらの行為が行われるよう監督することが求められる。

注4 今回の整理はあくまでも医師法、歯科医師法、保健師助産師看護師法等の解釈に関するものであり、事故が起きた場合の刑法、民法等の法律の規定による刑事上・民事上の責任は別途判断されるべきものである。

注5 上記1から5まで及び注1に掲げる行為について、看護職員による実施計画が立てられている場合は、具体的な手技や方法をその計画に基づいて行うとともに、その結果について報告、相談することにより密接な連携を図るべきである。上記5に掲げる医薬品の使用の介助が福祉施設等において行われる場合には、看護職員によって実施されることが望ましく、また、その配置がある場合には、その指導の下で実施されるべきである。

注6 上記4は、切り傷、擦り傷、やけど等に対する応急手当を行うことを否定するものではない。


〜〜〜 参 考 〜〜〜

●「盲・聾・養護学校におけるたんの吸引等の取扱いについて」(平成16年10月22日付け16国文科初第43号文部科学省初等中等教育局長通知より)

医師又は看護職員の資格を有しない教員によるたんの吸引等の実施を許容するための条件

I たんの吸引、経管栄養及び導尿の標準約手順と、教員が行うことが許容される行為の標準的な範囲

 たんの吸引、経管栄養及び導尿について、文部科学省のモデル事業等における実績と現在の医学的知見を踏まえると、看護師 ※注1が当該盲・聾・養護学校等に配置されていることを前提こ、所要の研修を受けた教員が行うことが許容される行為の標準的な範囲は、それぞれ以下の通りである。しかし、いずれの行為にあっても、その処置を行うことが適切かどうかを医療関係者が判断し、なおかつ、具体的手順については最新の医学的知見と、当該児童生徒等の個別的状況を踏まえた医療関係者の指導・指示に従うことが必要であり、緊急時を除いては、教員が行う行為の範囲は医師の指示の範囲を超えてはならい。

1 たんの吸引

(1)標準的な手順
 ア.深く入りすぎないようにあらかじめチューブを挿入する長さを決めておく。
 イ.適切な吸引圧で、吸引チュ−ブを不潔にしないように、吸引する。
 ウ.咽頭にある痰を取り除くには、鼻腔から吸引チューブを挿入して吸引した方が痰を取り除きやすい場合もある。
 エ.その場合、鼻腔粘膜などを刺激して出血しないようにチューブを入れる方向等に注意しながら挿入する。

(2)教員が行うことが許容される標準的な範囲と看護師の役割
 ア.咽頭より手前の範囲で吸引チューブを口から入れて、口腔の中まで上がってきた痰や、たまっている唾液を吸引することについて、研修を受けた教員が手順を守って行えば危険性は低く、教員が行っても差し支えないものと考えられる。
 イ.鼻からの吸引には、鼻腔粘膜やアデノイドを刺激しての出血が、まれではあるが生じうる。また、鼻やロからの、咽頭の奥までの吸引を行えば、敏感なケースでは嘔吐・咳込み時の危険性もある。したがって、鼻からの吸引や、ロから咽頭の奥までの吸引は、「一般論として安生であるとは言い難い。しかし、鼻からの吸引は、児童生徒等の態様に応じ、吸引チューブを入れる方向を適切にする、左右どちらかのチューブが入りやすい鼻からチューブを入れる、吸引チューブを入れる長さをその児童生徒等についての規定の長さにしておく、などの手順を守ることにより、個別的には安全に実施可能である場合が多い。以上の点を勘案すると、教員は、咽頭の手前までの吸引を行うに留めることが適当であり、咽頭より奥の気道のたんの吸引は、看護師が担当することが適当である。

2 経管栄養(胃ろう・腸ろうを含む)

(1)標準的な手順
 ア.鼻からの経管栄養の場合には、既に留置されている栄養チューブが胃に挿入されているか注射器で空気を入れ、胃に空気が入る音を確認する。
 イ.胃ろう・腸ろうによる経管栄養の場合には、び爛や肉芽など胃ろう・腸ろうの状態に問題がないことの確認を行う。
 ウ.胃・腸の内容物をチューブから注射器でひいて、性状と量を確認、胃や腸の状態を確認し、注入内容と量を予定通りとするかどうかを判断する。
 エ.あらかじめ決められた注入速度を設定する。
 オ.楽な体位を保持できるように姿勢の介助や見守りを行う。
 カ.注入終了後、微温湯を注入し、チューブ内の栄養を流し込む。

(2)教員が行うことが許容される標準的な範囲と看護師の役割
 ア.鼻からの経管栄養の場合、栄養チューブが正確に胃の中に挿入されていることの確認は、判断を誤れば重大な事故につながる危険性があり、看護師が行うことが適当である。
 イ.胃ろう・腸ろうによる経管栄養は、鼻からの経管栄養に比べて相対的に安全性が高いと考えられるが、胃ろう・腸ろうの状態に問題のないことの確認は看護師が行うことが必要である。
 ウ.経管栄養開始時における胃腸の調子の確認は、看護師が行うことが望ましいが、開始後の対応は多くの場合は教員によっても可能であり、看護師の指示の下で教員が行うことは許容されるものと考えられる。

3 導尿

(1)標準的な手順
 ア.全手順を通じ、身体の露出を最小限とし、プライバシーの保護に努める。
 イ.尿道口を消毒薬で清拭消毒する。
 ウ.カテーテルが不潔にならないように、尿道口にカテーテルを挿入する。
 エ.カテーテルの挿入を行うため、そのカテーテルや尿器、姿勢の保持等の補助を行う。
 オ.下腹部を圧迫し、尿の排出を促す。
 カ.尿の流出が無くなってから、カテーテルを抜く。

(2)教員が行うことが許容される標準的な範囲と看護師の役割
 ア.尿道口の清拭消毒やカテーテルの挿入を本人が自ら行うことができない場合には、看護師が行う。
 イ.本人又は看護師がカテーテルの挿入を行う場合には、尿器や姿勢の保持等の補助を行うことには危険性はなく、教員が行っても差し支えないものと考えられる。

II 非医療関係者の教員が医行為を実施する上で必要であると考えられる条件

1 保護者及び主治医の同意

(1) 保護者が、当該児童生徒等に対するたんの吸引等の実施について学校に依頼し、学校の組織的対応を理解の上、教員が当該行為を行うことについて書面により同意していること。
(2) 主治医が、学校の組織的対応を理解の上、教員が当該行為を行うことについて書面により同意していること。

2 医療関係者による的確な医学管理

(3) 主治医から看護師に対し、書面による必要な指示があること。
(4) 看護師の具体的措示の下、看護師と教員が連携・協議して実施を進めること。
(5) 児童生徒等が学校にいる間は看護師が学校に常駐すること。
(6) 保護者・主治医 ※注2・看護師及び教員の参加の下、医学的管理が必要な児童生徒ごとに、個別具体的な計画が整備されていること。

3 医行為の水準の確保

(7) 看護師及び実施に当たる教員が必要な知識・技術に関する研修を受けていること。
(8) 特定の児童生徒等の特定の医行為についての研修を受け、主治医 ※注2が承認した特定の教員が実施担当者となり、個別具体的に承認された範囲で行うこと。
(9) 当該児童生徒等に関する個々の医行為について、保護者、主治医 ※注2、看護師及び教員の参加の下、技術の手順書が整備されていること。

4 学校における体制整備

(10) 学校長が最終的な責任を持って安全の確保のための体制の整備を行うため、学校長の統括の下で、関係者からなる校内委員会が設置されていること。
(11) 看護師が適正に配置され、児童生徒等に対する個別の医療環境に関与するだけでなく、上記校内委員会への参加など学校内の体制整備に看護師が関与することが確保されていること。
(12) 実施に当たっては、非医療関係者である教員がたんの吸引等を行うことにかんがみ、学校長は教員の希望等を踏まえるなど十分な理解を得るようにすること。
(13) 児童生徒等の健康状態について、保護者、主治医 ※注2、学校医、養護教諭、看護師、教員等が情報交換を行い連携を図れる体制の整備がなされていること。同時にそれぞれの責任分担が明確化されていること。
(14) 盲・聾・養護学校において行われる医行為に関し、一般的な技術の手順書が整備され、適宜更新されていること。
(15) 指示書や指導助言の記録、実施の記録が作成され、適切に管理・保管されていること。
(16) ヒヤリハット事例の蓄積・分析など、医師・看護師の参加の下で、定期的な実施体制の評価、検証を行うこと。
(17) 繋急時の対応の手順があらかじめ定められ、その訓練が定期的になされていること。
(18) 校内感染の予防等、安全・衛生面の管理に十分留意すること。

5 地域における体制整備

(19) 医療機関.保健所、消防署等地域の関係機関との日頃からの連絡支援体制が整備されていること。
(20) 都道府県教育委員会等において、総括的検討・管理が行われる体制の整備が継続的になされていること。


注1)盲・聾・養護学校における業務にかんがみ、重度障害児の看護に経験を有する看護師が配置されていることが望ましい。(重度障害児の看護に十分な知識・経験のある保健師、助産婦及び准看護師を含む)

注2)学校が依頼し、主治医の了承の下に指導を行う「指導医」がいる場合は「指導医」も含む。