レジオネラ症を予防するために必要な措置に関する技術上の指針の概要

1 目的

 昨年の7月から8月にかけて、宮崎県及び鹿児島県において、公衆浴場を原因とするレジオネラ症の集団発生が生じたことから、その発生防止対策を公衆浴場法及び旅館業法等に基づく条例に追加する場合の指針を発出する等の対策を講じてきた。

 本年に入って、公衆浴場での感染の他、旅客船舶を感染源とする集団感染、院内感染も散発している。これに対し、これらの施設や老人福祉施設など公衆浴場や旅館以外の施設については、感染防止のための具体的な措置を定めた基準等はない。

 感染症の予防及び感染者の患者た対する医療に関する法律(平成10年法律第114号)第9条第1項の規定による「感染症め予防の総合的な推進を図るための基本指針(以下「基本指針」という。)」が定められている。しかし、基本指針では、病院、診療所、老人福祉施設等の開設者及び管理者は、感染症が発生し又はまん延しないよう、必要な措置を講じる、というように施設内感染の予防措置は抽象的にしか規定されておらず、また、これらの施設の設備及び運営基準は、省令等で定められているが、いずれも同予防措置が具体的に記載されていない。

 そこで、基本指針に基づく技術的な事項として、施設におけるレジオネラ症発生防止対策を指針として策定することにより、施設横断的な対応を可能とし、その発生防止対策の強化を図るものである。

2 指針の概要

(1)レジオネラ症の発生を防止する対策の基本的考え方(第一関係)

 レジオネラ症の発生を防止する対策の基本は、レジオネラ属菌が繁殖しやすい条件をできるだけなくし、これを含むエアロゾルの飛散を抑制する対策を講じること。具体的には、以下の観点からの措置を講じることが必要。

 ア 微生物の繁殖及び生物膜等の生成の抑制

 イ 設備内に定着する生物膜等の除去

 ウ エアロゾルの飛散の抑制

(2)入浴設備における衛生上の措置(第二関係)

ア 構造設備の措置

 (ア)塩素系薬剤等の注入口又は投入口に関すること。

 (イ)貯湯槽の構造設備に関すること。

 (ウ)浴槽から排出された水を再利用するための回収槽の設備に関すること。

 (エ)エアロゾルを発生させる気泡発生装置等の構造設備に関すること。

 (オ)浴槽に湯又は水を供給する設備の構造に関すること。

 (力)打たせ湯及びシャワーに用いる湯又は水の使用に関すること。

イ 維持管理上の措置

 (ア)浴槽水の水質検査に関すること。

 (イ)浴槽水の換水方法に関すること。

 (ウ)ろ過器及び循環配管の消毒及び清掃に関すること。

 (エ)浴槽から排出された水を再利用するための回収槽の水の使用に関すること。

 (カ)浴槽水の消毒方法に関するこ七。

 (キ)貯湯槽の温度、清掃及び消毒に関すること。

 (ク)エアロゾルを発生させる気泡発生装置等の取扱いに関すること。

 (ケ)入浴者に対する注意喚起に関すること。

(3)空気調和設備の冷却塔における衛生上の措置(第三関係)

ア 構造設備の措置

  冷却塔の構造及び設置場所に関すること。

イ 維持管理上の措置

  冷却塔の使用開始時及び使用期間中の清掃及び換水、冷却水の殺菌剤等の使用に関すること。

(4)給湯設備における衛生上の措置(第四関係)

ア 構造設備の措置

  貯湯式の給湯設備や循環式の中央式給湯設備の構造設備に関すること。

イ 維持管理上の措置

  貯湯槽等の滞留水の排水、清掃等に関すること。

(5)その他の設備の衛生上の措置(第五関係)

エアロゾルを発生させる機器や設備の衛生上の措置に関すること。

(6)自主管理(第六関係)

自主管理手引書及び点検表の作成、並びに責任者の選定に関すること。

 

(参考)

感染症の予防及び感染者の患者に対する医療に関する法律(平成十年法律第首四十四号)

 第九条 厚生労働大臣は、感染症の予防の総合的な推進を図るため基本的な指針(以下「基本指針」という。)を定めなければならない。

 2 基本指針は、次に掲げる事項について定めるものとする。

  一〜十 略

  十一 その他感染症の予防の推進に関する重要事項

 3〜5 略

感染症の予防の総合的な推進を図るための基本的な指針(平成十一年四月一日厚生省告示第百十五号)

 第十一 その他感染症の予防の推進に関する重要事項

  一 施設内感染の防止

 病院、診療所、老人福祉施設等において感染症が発生し又はまん延しないよう、(中略)また、これらの施設の開設者及び管理者にあっては、提供された感染症に関する情報に基づき、必要な措置を講じるとともに、普段より施設内の患者及び職員の健康管理を進めることにより、感染者が早期発見されるように努めること。(後略)