長岡市医師会たより No.410 2014.5


もくじ

 表紙絵 「ミュンヘンの夜景」 木村清治(いまい皮膚科医院)
 「春闘」 廣田雅行(長岡赤十字病院)
 「私の好きなTVドラマ」  横川かおり(長岡赤十字病院)
 「長岡市の生活習慣病予防対策事業」田辺一彦(田辺医院)
 「巻末エッセイ〜奈良まほろばの旅」 郡司哲己(長岡中央綜合病院)



「ミュンヘンの夜景」 木村清治(いまい皮膚科医院)


春闘  廣田雅行(長岡赤十字病院)

 4月に入り、陽が射して暖かくなって参りますと、冬眠致して居りました「遊びの虫」が、モゾモゾと致して参ります。流石は我が女房殿、その辺は百も御承知、「ソロソロ参りますか?。」との御下問。口の方からは「そうだねえ、未だ一寸早いかも知れないけれどねェ。」等と戯言を、理性は抑えにかかるのですが、手の方はすでにカメラに……。駄目ですねェ、「男」なんてェ者は。何時になっても子供とおんなじで。と、言う事で、早春の「雪国植物園」に出掛けたのでは有りました。
 今年は天候にもブレが有り、春が早く進んでいるのか遅れているのか、家にいては中々分からない状態でした。植物園についてみましたが、早い様な遅い様な。ま、要するに入ってみなければ、と言う事で、兎に角歩き始めた老夫婦ではありました。ボランティアの方々の手が入って、杉の木が間引かれ、日当たりの良い雑木林と、一寸した広場が広がり、もうカタクリが咲いていました。しかし未だショウジョウバカマは花茎が立ち上がった程度。どうも順番が今一つ……。閑話休題、少し歩いてギフチョウのポイントに近付きますと、数人のカメラを持った人達があちこち見渡しながら佇んでいます。今年の「春の女神」の追っ掛け連です。おっと、そう言えばこちらもその類ではありましたな。暫く時間を掛けて追っては見ましたが、冬眠明けの「鈍熊」と「暫く使っていなかったカメラ」の組み合わせ、撮ることは撮れてもお見せ出来る様な物はとてもとても。女房殿の「今年もギフは見られたんだし、カメラも慣れるまではネ。」と言う優しい言葉を慰めに、次のポイントへ参りました。そこはテングチョウのポイントで、エノキの植えられた広場に接した道路です。日当たりが良いので、冬眠明けの蝶が日向ぼっこに出て来る場所です。しかしエノキは未だ葉の芽生えも無く、蠢く物影一つ有りませんでした。チョットがっかり。気を取り直して次のポイント、小高い丘を目指しました。
 そこは日当たりが良く、冬眠明けのタテハチョウが見られる場所です。登ってみますと、こんな物が枝にぶらさがっておりました。(写真1)何だかお分かりでしょうか?これはウスタビガと言う「蛾」の繭です。中に蛾の蛹が入っています。形だけでなく、こんなに目立つ色(薄黄緑色)でぶら下がっていて大丈夫なのかと他人(?)事ながら心配になってしまいます。ところで「蛾」と言えば、皆様の中では「蝶」と「蛾」の見分け方として、羽を閉じて止まるかどうかと言う事を挙げられる方が多いかと思います。ま、フランス語では「蝶」と「夜の蝶」と言う事で、同じ者の類と言う事でしょうからあまり問題には成らないのかも知れませんが、オット、一寸脱線してしまいました、話を戻しましょう。そうです、こんな風に閉じて止まるのが「蝶」ですね。(写真2)ですが、特に春先等、日向ぼっこをして体温を上げようとする様な時、タテハチョウ類ではこの様に羽を開いて止まって居る事の方が多いのです。良く見られる者はルリタテハ、アカタテハ、ヒオドシチョウ等です。(写真各々3、4、5)こんな風にして、体中に太陽の熱を蓄えて飛翔に備えているのです。どこかしら戦闘機に似たような風格を感じてしまうのは、私が飛行機、特に第2次世界大戦中のプロペラ機が好きなせいでしょうか?。
 丘に登り、周囲を見渡しておりますと、反対側から登って来る人の足元から飛び立つ者が有ります。(写真6)居ました、初めの内は警戒心が強く、否、寧ろこちらの動きが拙いと言うべきでしょうかな、中々種類を確認する事が出来ませんでしたが、暫くすると分かりました。ヒオドシチョウです、それもボロボロの。(写真7)この蝶の名前、「ヒオドシ」は戦国時代の武士が戦いの時に着用した鎧の中に、「緋縅の鎧」と言う物が有り、緋色の紐や皮で甲板を綴って作った鎧とされています。それにちなんで名付けられたとされていて、この蝶も歴戦の古武士に相応しく、傷んでは居ますが、凛とした緊張感を漂わせて居る様に感じられます。この蝶は元々かなり好戦的とされ、縄張りをしっかりと定め、これを犯そうとする者が有ると徹底的に追い払おうとします。又、自分の縄張りですので、余程脅かされるとかしなければ、必ずその場所に戻って来ます。人に対しても、近付くと飛び上がって周囲を回り、近くの他の場所に位置取りをします。それがさっきの行動です。ですから、同じ種類だったりしますと、この写真の様に徹底的に追尾して追い払います。縄張りを先に持っていた方がやはり強い様で、写真でも新参者を追尾している方が、件の「古武士」で有ろう事が、右の後ろ羽の状態から窺えます。(写真8)越冬した彼らに取って、この時期が子孫を残すための、一世一代、文字通り「春闘」の時で、負ける訳には行かないのです。その日はカメラの調子も有り、ヒオドシに遊んで貰った事を手土産に撤収する事と致しました。
1週間後、同じ場所を尋ねてみますと、ウスタビガの繭は跡形も無くなっており、鳥か何かに食べられたか、どなたかがお持ち帰りになられたか、知る術も有りませんでした。又、件の古武士はもう居ないだろうと思いながら周囲を見回しておりますと、時折り飛び立つ赤い蝶の姿が……。もしやと思いながら近付いてみますと、居ました。左の後ろ羽も若干傷んでは来ていましたが、未だ矍鑠とした様子で周囲を睥睨して居ります。(写真9)彼氏の「春闘」は、まだ続いて行く様です。

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私の好きなTVドラマ 横川かおり(長岡赤十字病院)

 はじめまして。長岡赤十字病院研修医2年目の横川かおりと申します。
  私の趣味は家でごろごろしながらTVドラマを見ることなので、最近ヒットした作品について書きたいと思います。

(1)勇者ヨシヒコシリーズ
  第1シリーズ「勇者ヨシヒコと魔王の城」は、テレビ東京系列のドラマ24枠で、2011年7月から9月まで放送された、福田雄一監督・脚本、山田孝之主演の連続テレビドラマです。第2シリーズ「勇者ヨシヒコと悪霊の鍵」は2012年10月から12月に放送されました。お人好しで純粋な若者ヨシヒコが勇者として魔王を倒しに冒険に繰り出す、ドラクエ風の物語です。「予算の少ない冒険活劇」というふれこみ通り、小道具・演出はとてもチープ、パロディ満載のストーリーはかなりシュールです。私のお気に入りはヨシヒコの仲間として冒険を共にする魔法使いのメレブ、ムロツヨシが好演しています。彼の使えない呪文とキャラクターに毎回爆笑。本当に福田雄一監督は天才だと思います。大きな声では言えませんが、同監督の作品「変態仮面」もおすすめです。

(2)闇金ウシジマ君シリーズビックコミックスピリッツで不定期連載されている、真鍋昌平による同名漫画をドラマ化したものです。映画化もされており、ドラマシリーズは第2シーズンまで放送済みです。主演は山田孝之、(1)のヨシヒコとは180度違った演技をみせています。話は10日5割の超暴利闇金融の営業者・ウシジマ君と闇金融を訪ねる客、およびその関係者の様々な人間模様を描いたストーリー。パチンコ狂いで売春でお金を稼ぐ主婦、有名になるために覚せい剤の売人となる読者モデル、援助交際の資金稼ぎに娘を売るタクシードライバー等、様々な人々が救いようのない状況に陥る様子が描かれています。中にはハッピーエンドもありますが大半が壮絶バッドエンドで、現実の厳しさを思い知るリアルな漫画です。後味の悪さがクセになります。

(3)失恋ショコラティエ2014年1月から3月までフジテレビ月9で放送されていた、松本潤主演の連続テレビドラマです。月9だから、主人公の女性が難しい恋愛に足を踏み入れて、なぜか強力なライバルに打ち勝ち結ばれて、うまくいったかと思えば春からロサンゼルス転勤だとか言われて、離れたくないけどキャリアは積みたいとか喚いて、最終的になぜか恋も仕事も絶好調★な感じだろうと思ってました。ところがこの作品はみんな上手くいかない。全員片思いだったり、汚いどろどろの感情に支配されてどうしようもなくなったり。さらに痛いほど共感できる名言が多くとび出し心に響きます。私が印象に残っているのは、主人公に思いを寄せられているモ系女子サエコと、主人公に思いを寄せているが上手くいかないアンチモテ系女子薫子のこんなやりとりです。

サエコ:「お菓子だって味がおいしいだけで十分なのに、それでも売るためには色や形を可愛くしたり、愛される努力が必要なんだと思う。自分に対してそういう努力ができる人が好かれるんだと思う。」

薫子:(心の声)「確かにお菓子は一生懸命飾ったり美味しさをアピールしたりする、そうしなければ売れないし。人間もそれと一緒なの?私が売れないのは当たり前の努力をしてないせいなの?それで興味を持ってくれないお客さんに分かってない!と怒ってた私が間違ってたってこと?」

 …ぐっときた。そしてなによりモテ系女子サエコを演じる石原さとみがめちゃくちゃ可愛いのです。本当にこれぞ天使。あざとい言動満載で、それだけでも一見の価値あるドラマです。
 他にも大好きなドラマはたくさんありますが、紙面が限られるのでここまでにします。もしまたこのような機会がありましたら、私の好きなTVドラマ1vol.2〜韓国ドラマ編〜でも書きたいと思います。

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長岡市が実施している便利な生活習慣病予防対策事業を知っていますか? 田辺一彦(田辺医院)

 長岡市では生活習慣病予防対策事業として保健師、栄養士、運動指導員による90分間の個別指導(費用はかかりません)を実施しています。そのモデル事業に参加させていただきましたので、その印象について述べたいと思います。
 内科で開業していますと高血圧、高脂血症、糖尿病、メタボリック症候群など生活習慣病の患者さんを多くみることになります。また薬物治療とともに食事指導や運動指導の必要な方も多いと思います。私は大学病院在籍中、心疾患の運動療法が専門でしたので生活習慣病の運動指導には少し自信はあります。しかし、ゆっくり説明する時間がないこと、またトレッドミルや自転車エルゴメータなどの運動機器もないことから、患者さん個々に運動処方することもほとんどできていない状況でした。食事指導にいたっては自分で料理することもほとんどない状態で、知識も不十分で不完全な状況でした。平成年度から標記の事業に関わる24機会を得て、手続きも簡単で非常に便利なツールと考えられたので報告させていただきます。
 まず、第一に費用も全くかからず、医療機関からみて非常に便利なツールであると言えます。食事指導や運動療法の適応となる患者さんが来院したときには、この事業の年間予定表を患者さんにお渡しして、患者さんに自分の都合に合わせて予約をとっていただきます。私はその患者さんの健診データのコピー、あるいは自院の検査データと食事や運動の注意事項があればそのコメントを市健康課に送付することで手続きは完了となります。第二に保健師、栄養士、運動指導員らによる各患者に合わせた分間のマンツーマンの個別90指導が挙げられます。市健康課から事前に供生活ふり返りアンケート僑と供3日間食事記録表僑が患者さんに送られ、それをもとにその患者さんに合わせた指導が行われるというものです。もちろん市健康課から医療機関へのフィードバックも行われます。
 受けていただいた患者さんの印象は「とても勉強になった」、「日常生活のなかで体を動かすコツがわかった」、「とてもおもしろかった」などみなさん好印象でした。そして多くの方は食事や運動に対してモチベーションが上がり顕著な急性効果があらわれていました。好印象の原因としては、集団を対象とした全体的な指導ではなく、その患者さん個々の食習慣や運動習慣に合わせた個別の指導を分間、しかも無料でしてい90ただける点にあると思います。栄養士や運動指導員の先生方が患者さんの食習慣、運動習慣を事前にチェックして説明して下さるので患者さんにとっても自分のためだけの分間90はとても有意義であり、新鮮に感じられたようです。患者さんによっては運動する服装持参で参加し、指導後実際にプログラム体験する方も多かったようです。
自院で栄養士の先生がいらっしゃるところや運動指導のできるところは必要ない事業かもしれませんが、自院で食事、運動指導が困難な医療機関や時間が十分とれない医療機関には便利な長岡市の生活習慣病予防対策事業の食事、運動指導を利用してみませんか。

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奈良まほろばの旅〜その1  郡司哲己(長岡中央綜合病院)

 「御朱印ここでいただけますか。」と家人。三百円と御朱印帳を差し出します。「はいはい、記帳いたしますんで参拝のお帰りにお受け取りくださいね。」と法華寺の尼さま。

 洒落た花柄の御朱印帳はネット書店アマゾンで購入したばかりです。以前から寺院に参拝すると「御朱印帳があればなあ……。」とつぶやいていたのでした。

 寺院めぐりは法華寺がスタート。三大美人のひとり光明皇后がモデルとされる十一面観音が本尊。(なお本物は限定公開で一般公開は残念ながら木像レプリカなんです。)

 「金箔とか彩色なしでもともと木の地肌色ですって。腰のひねりと右足の親指がくいと上がるのに注目だそうよ。」と家人が小声で解説。受け売りの出典は彼女の愛読書になった地元のもりきあや著「おひとり奈良の旅」(光文社)です。るるぶなどのガイド本の没個性記載に比べ具体的な情報が満載で、夫婦での「おふたり旅」の行動のてびきにも最適。

 法華寺の帰り、御朱印帳を手にした家人はにっこりと見せてくれました。「すごくきれいに上品に書いてあるよ。」「どれどれ。おめでとう、御朱印ゲット第一号!」この旅行中にいくつ御朱印をゲットできるかも、お楽しみのひとつなのでした。

 さてわたしが京都で開催される学会出席のついでに、二日ほど休暇を取って、家人をお伴に小旅行を計画したのです。行き先は奈良です。数年前も京都での結婚式のついでに、奈良に小旅行。家人はそのときに鄙びた古都の奈良がとても気に入ったようです。そこで今回は少しゆっくりと三泊二日半コースを計画。ちなみに朝に長岡出発、新幹線を乗り継ぎ、京都で乗り換え、奈良到着まで片道で五時間、約半日はかかるのです。

 四月からテレビで藪内佐斗司先生(東京芸大教授、彫像家)の「ほとけの履歴書」なる仏像(と仏教)の紹介番組を毎週楽しく見ています。彼のデザインした平城遷都千三百年祭のシンボル「せんとくん」は好みでないですが、彼の仏像のイラストはすてきです。これがきっかけで仏師運慶の初作である大日如来(円成寺、奈良郊外忍辱山)はぜひ鑑賞したいとマークして出発しました。

 五月の連休最終日の朝に出発。午後に奈良到着。ホテルに荷物を置きすぐに見学に出かけました。ちなみにホテルはサ○イ昨年月号特集11「奈良新まほろばの旅」を参考に予約。宿泊順に奈良ロイヤル、奈良ホテル、アジール奈良です。とくに初日は午後から夕までの限られた観光時間なので佐保路の三観音と呼ばれる寺院と平城宮跡に近いホテルです。法華寺につづけて国宝の五重の小塔もある海竜王寺、そして不退寺に参拝しました。なかでも業平ゆかりの不退寺では、若いイケメンの副住職がふたりきりの見学者なのに丁寧にご案内してくださいました。「この赤い椿は珍しい黒椿の品種です。」「本尊の観音さんの白いお顔は胡粉で、長いリボンが両脇に垂れお美しいですね。」

 業平自身がこの木像を彫った伝承もあるがさすがにこれは疑問です。池の日当たりに業平ゆかりのかきつばたが青紫に一輪咲いていました。

 その日最後に訪れた平城宮跡はとにかく広い史跡の夕景色でした。最近復元された朱雀門と大極殿をよそに、空高く雲雀が囀り、また降下して巣のある草原を歩いていました。

 − 平城宮跡にて

草に寝ね空の広ごる夕雲雀  蒼穹

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