長岡市医師会たより No.411 2014.6


もくじ

 表紙絵 「梅雨の頃」 丸岡稔(丸岡医院)
 「三期目を迎えて」 会長 太田裕(太田こどもクリニック)
 「理事就任のご挨拶」 川嶋禎之(長岡赤十字病院)
 「理事承認のご挨拶」 児玉伸子(こしじ医院)
 「巻末エッセイ〜奈良まほろばの旅〜その2」 郡司哲己(長岡中央綜合病院)



「梅雨の頃」 丸岡稔(丸岡医院)


三期目を迎えて  会長 太田 裕(太田こどもクリニック)

 このたび、皆様のご推挙により引き続き会長を務めさせていただくこととなりました。今後ともご指導、ご支援よろしくお願いいたします。
 今年の4月1日、当医師会が公益法人より一般社団法人に移行しました。これに伴い役員の選出方法、監事の役割、会計報告等いろいろ変わってまいりました。3月26日に役員の選挙が行われましたがここで選出された方々が、6月5日の総会で承認される運びとなりました。幸いなことに大塚武司副会長、長尾政之助副会長はじめ多くの役員の方々が再選されました。小林眞紀子先生、羽生忠正先生が勇退され、新たに川嶋禎之先生、児玉伸子先生が理事として加わりました。新体制となりますが長岡市民の皆様の健康を守るため努力していきたいと存じますので、皆様のご協力よろしくお願いいたします。
 さて現在、医療界が直面しております最大の問題は、いわゆる2025年問題です。つまり団塊の世代が75歳を超え日本の高齢化のピークを迎えます。この時期をいかに乗り切るかが大きな課題となっています。そのため政府は地域包括ケアシステムを立ち上げました。これは病気、介護を必要とする人などを含め高齢者を地域で支えていくシステムです。この政策の大きな柱の一つとして在宅医療があります。これまでのように老健や特養などの施設を作る予算もなく、また高齢者があまりに多いため、できるだけ在宅で最後の看取りまで看ていただきたいと政府は考えています。その道筋として、まず病床の区分の変更を行いました。つまり36万床ある急性期病床のうち9万床減らすという目標です。そして、回復期病床、慢性期病床、最後は在宅へという流れを作るためです。この政策を実現するため、現在ある急性期病院に対して非常に高いハードルを課しました。例えば日赤のような地域医療支援病院に対してはこれまで紹介率60パーセント以上かつ逆紹介率30パーセント以上でしたが、これからは紹介率65パーセント以上かつ逆紹介率30パーセント以上となりましたし、また500床以上の病院に関しては紹介率40パーセント以上もしくは逆紹介率30パーセント以上というハードルを設けました。これが達成できないときはいろいろのペナルティーを課すというシステムです。長岡には急性期病院が3つありますが病院の運営が非常に厳しくなると予想されますので、開業医の先生からもできるだけ多く紹介状を書いていただければと思います。また病院の方からも逆紹介が増えると思われます。これまで病院でフォローしていた患者さんが逆に開業医の在宅医療のほうに紹介されてくることになります。長岡市医師会も在宅医療が有機的にスムースに行えるよう模索中ですが、開業医だけで在宅が行えるはずもなく、病院、訪問看護ステーション、介護を含めた大きな連携の輪を早急に作って行かなければと考えております。
 もう一つ医師会で取り組もうと思っている事があります。それは長岡地域に24時間アクセス可能な医療者向けの保育園を作ることです。長岡に1カ所でも24時間利用でき、病児保育を持った保育園で、中越地区で働く医師、看護師の皆さん全てが利用できることとなれば、これまで以上に子育てをしながら仕事をすることができる医療圏となります。つまり医師、看護師の確保の大きな手助けとなります。そして働く人にやさしい長岡に是非来てみたいと思う人も増えるのではないかと思います。
 次に、昨年来準備を進めてまいりました、旧市役所の「さいわいプラザ」への急患センター移転が5月13日無事終わり、急患業務を行っています。広いスペースでやや導線が長いようですが、評判は良いようです。また、X線装置、エコーの導入があり、是非利用していただければと思います。また、長岡市と共に進めてまいりました、胃がんのABC検診が5月よりスタートしました。全国でもまだあまり取り組まれていない検診ですが、ピロリ菌抗体とペプシノーゲンの測定で、胃がんの危険度を計り、胃がんの発見と更にピロリ菌除菌による胃がん発生の低減化を行う、胃がん撲滅へ向けた新しい試みです。この検診の評価は、10年後20年後かもしれませんが、その結果を楽しみにしています。
 まだまだ取り組まなければならない課題が多くありますが、「これからも益々社会に貢献する医師であり、医師会でありたい」との理念のもと、会員の皆様のご協力、医師会活動への参加、宜しくお願いいたします。

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理事就任のご挨拶 川嶋禎之(長岡赤十字病院)

 このたび、新しく理事を拝命いたしました長岡赤十字病院の川嶋禎之(かわしまただし)と申します。長らく理事を勤められた、羽生先生の定年に伴う日赤病院枠の入れ替わりというには、前任者に比べ、学識、見識、体力ともに見劣りしますがご容赦ください。また、これまで、日々の忙しさにかまけて、臨床、特に整形外科のごく狭い分野にしか興味を持っておらず、医師会活動についてはほとんど傍観者の立場でしたので、常識知らずのことも多々ございますがこれもご容赦いただきたく思います。
 4月からこちらも“新米”の副院長として医療制度についての勉強を始め、付け焼刃的知識を詰め込んでおりますが、医師会の役割については地域包括ケアなど医療・福祉に関して“地域”がキーワードとなってきている時代のひとつの核であると私なりに理解しつつあります。今後、“病院”から“地域”へという時代の流れに急性期病院が乗り遅れないよう、医師会で勉強させていただいた情報を病院に持ち帰るというのが私の当面の優先度の高い仕事かと心得ております。よろしくご指導お願いいたします。
 さて、恒例ですので自己紹介をさせていただきます。私、出身は千葉県です。船橋高校から新潟大学に入学、在学中は部活(バスケットボール)に明け暮れ、昭和53年に卒業(市内には、立川病院の岡部先生、精神医療センターの丸山先生、中央病院の郡司先生、など多数の同期の先生がお勤めですので心強い限りです)、同年4月新潟大学整形外科に入局、その後、県内・県外各地で研修いたしました。中越・魚沼方面では30年前のことになりますが県立小出病院、十日町病院、小千谷総合病院などに勤務しておりました。平成5年からは縁あって長岡赤十字病院に勤務し、日赤町から河川敷への引越しの騒ぎも、中越地震の騒ぎも中から経験させていただきました。
 振り返ってみますと、千葉の親元で18年、独り暮らしで新潟県内に17年、県外、国外に4年、結婚して長岡で21年、青葉台に家を建てて19年ですので人生の中で長岡(青葉台)の暮らしが一番長くなってしまいました。

男児立志出郷関

学若無成死不還

埋骨豈惟墳墓地

人間到処有青山

という漢詩があります。男は、地縁、血縁より自ら求めた場所、求められた場所で骨を埋める覚悟で仕事しろといわれているものと解釈しています。私は今年で還暦ですので人生も後半というより終盤ですが、医師会を通じて、ここ長岡の地域医療に少しでも貢献できるよう勤めたいと思っております。今後ともご指導よろしくお願い申し上げます。

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理事就任のご挨拶 児玉伸子(こしじ医院)

 6月5日の長岡市医師会総会から2年間の任期で、新たに長岡市医師会の理事を務めさせて頂くことになりました“児玉伸子”です。私と市医師会のご縁は23年前にB会員として入会させていただいてからです。年前に供こしじ医院僑を開業した15時は、一時旧三島郡医師会に属しましたが、長岡市との合併後はA会員として再度お世話になっています。
 開業当時も様々の手続きについてご助言頂きましたが、A会員の現在は特定健診や予防注射等の日常診療業務のみならず、実に多方面でお世話になっています。私自身も、ただの会員の時はほとんど意識することなく、会長・副会長や理事等の役員の方々にお世話になっていました。今回理事を拝命した機会に、よく考えてみると、長岡市医師会の役割の多様性と重要性に改めて驚いています。
 これからの2年間は先輩理事諸氏のお邪魔にならないように、その上で若干でもお役にたてれば上出来と考えています。今期は、広報を担当させていただくことになりました。そこで、以前より私が編集委員を務めます当供ぼん・じゅ〜る僑の紙面を借りて、理事会での話題等を少しづつ紹介したいと考えています。もちろん、長岡市医師会や理事会としての決定事項は、今まで同様に正式な告知が行われ、それに代わるものではありません。会員の皆様へ、長岡市医師会や理事会の活動について、また別の角度から情報提供できれば幸いです。
  勝手に“蛍の瓦版”と名づけました。その心は、“瓦版のように気楽な内容で、蛍のお尻程度に明るくなりたい”です。まだ、理事の任期も始まったばかりで、全てがこれからです。ご指導ご鞭撻のほど宜しくお願いします。

【蛍の瓦版(1)】

 5月14日の長岡市医師会理事会のトピックです。この他にも様々の事案があり、順不同です。

1.朝日新聞の記事
  月に二回開催される新潟県医師会の理事会で、朝日新聞の記事が問題となったと、県医師会理事の吉川明先生より報告がありました。5月11日の一面の見出しに、「診療報酬不適切請求の疑い 厚労省、半数の調査放置 対象8000医療機関」とありました。審査会の怠慢で不正請求を見逃しているとか、高得点イコール過剰診療である等現状をよく理解していない内容でした。また監査と指導を混同し、多くの医療機関が不正請求を行っているかのような論調でした。日本医師会は13日付で正式に抗議をしていますが、回答はないようです。
 以下は私見です。日本の大新聞がスクープ的な記事を掲載する場合は、所轄官庁の提灯持ちのことが多いようです。厚労省の意向は審査の強化でしょうか。

2.紹介率
 今回の診療報酬点数の改定で、病院の紹介率の算定方式が変更され、病院にとって非常に厳しいものとなりました。紹介率は、初診患者のうちの紹介患者の割合で、今までは救急患者も紹介患者に含まれていました。今回からは救急患者はカウントされず、この計算式の変更によって、大半の病院の紹介率は10%近く低下します。紹介率・逆紹介率は病院の承認要件のひとつで、これをクリアーできなければ、年間数千万円の減収となります。長岡赤十字病院を含む県内の七つの地域支援病院の承認要綱は、紹介率65%以上かつ逆紹介率40%以上です。長岡中央綜合病院が500床以上のその他の病院に該当するため、紹介率40%以上または逆紹介率30%以上が必要とされ、現状のままではいずれも厳しい状況です。
 会員の先生方は、患者さんを紹介されるときや患者さんが希望した場合は極力紹介状を持参させて下さい。患者さんの中には、通常の診療は診療所で受け、機器のフォローや病状の経過観察のため、年に一度程度病院を受診される方がいます。このような方にも、経過を書いた紹介状を持たせるようにしてください。手紙の形式であればごく簡単なもので十分とのことですが、名刺だけでは不可です。当然、診療情報提供料も算定可能です。また逆紹介も増えると思われますが、ご了解ください。
 4月の消費税増税は、高額の医療機器や医療材料の買い入れ割合が大きい病院にとって、診療所よりも一層厳しいものです。また診療報酬による補填も、病院にとっては不十分なものでした。その上で病院の承認要件が強化されました。よろしくご配慮ください。

3.ABC検診
 胃がんのABC検診が始まりました。40歳から70歳が対象です。その中で5の倍数の年齢の方は長岡市の検診対象で、1,200円の負担です。それ以外は医師会の任意検診の対象なので、4,100円に消費税が加算されて、4,428円です。新しい制度のため、混乱があると思います。医師会事務局へ気軽にお問い合わせください。

4.早期医学体験実習
 新潟大学の早期医学体験実習の受け入れ機関について、今年は長岡地区から5件が推薦されました。新潟大学では、学生の増員に伴い受け入れ機関の増加を希望しています。受け入れ経験者によると、受け入れ側にも刺激的な経験だそうです。今年は8月末の火水の二日間ですが、来年度以降の受け入れに興味のある方は是非ご一報ください。

5.最後に
 長岡市医師会は4月1日より、新たな制度による一般社団法人へ移行しました。この制度では、役員の任期は総会を起点とするため、今期は6月5日からの二年間となりました。今期の役員の業務分担が表1です。理事会での話題を中心に、少しずつ医師会に関することをご紹介してゆく予定です。ご意見ご要望お待ちしております。

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奈良まほろばの旅〜その2  郡司哲己(長岡中央綜合病院)

 一泊目の奈良ロイヤルホテル。天然温泉「天平の湯」があり、疲れを癒すよい大浴場でした。夕食は館内の割烹「竹の屋」で会席弁当一人前とせっかく本場だからと三輪そうめん二人前を注文して夫婦ふたりでシェア。食べ過ぎに注意です。「このお店のそーめんは量が多いですか?」「そうやねえ、ふつうだと思いますけれど。」と困った表情の仲居さん。「まあ二人分にしておきます。」「かしこまりました。」
 会席料理を分け合い、おかずにつつきながら、冷酒をちびり。海が遠いのにお造りがうまいと感心しながら、具に椎茸の煮物がのった冷たい三輪そうめんをおいしくいただきました。会計で仲居さんがにっこり。「あのお、そうめんはいかがでしたか?」「おいしかったです。」「量的には?」「えっと、ふつうでした。」双方でふふふと笑いました。

 朝食は初めての奈良の茶粥で、「ふーんこんなものかい。」ってところ。なおただの白いご飯はげちゃっとしていてまずい。でもお味噌汁の具が焼き茄子でおいしい。ホテルで「手造り乾燥焼き茄子」が袋詰で販売中、これはすぐれものです。
 朝食後はタクシーで平城京歴史館経由で奈良ホテルへ。せっかく行った歴史館は連休の代替の臨時休館で残念。目的の遣唐使船の復元模型は外の展示でかいま見えました。あんなんで大航海したんですね。

 ホテルに荷物を置き、そばの興福寺までのんびり歩き始めました。道路脇の黄色い絵入りの鹿の飛び出し注意の交通標識がめずらしい。興福寺では中金堂の補修工事中で、その瓦に署名する寄進の募集をしていました。「わたしの悪筆では仏様に失礼だから、君が書きなさい。」と我が家の代表権を譲ると、家人は書道塾に今も通う身ですから、了解して筆を握りました。ふたりで相談しながら、病気療養中の姉の平癒と家内息災を祈願しました。
 ちょうど北円堂が春の特別公開中で運慶晩年の作、弥勒仏座像や表情描写がみごとな世親・無著菩薩立像が見学できて幸運でした。メインの国宝館にはかの阿修羅像や天燈鬼以外にも、大きな千手観音菩薩立像などとても見応えがありましたが、ほどほどで切り上げです。

 昼食は前日に電話予約しておいた評判の蕎麦屋「玄」へ。(例のガイド本のお勧め)まるで小路奥の隠れ家風の狭いお店は、玄関から上がると旧家のお座敷。そこへ同好の客と相席で座り、胡麻豆腐のおつまみと辛み大根を薬味にいなか蕎麦を手繰りました。まずまずの及第点。

 店を出て地図を片手に歩き始めます。次の目的地の新薬師寺まで二十分ほど。でも好天過ぎて、もう五分で現地到着の地点でギブアップしギャラリー喫茶で休息。冷たいコーヒーのついでに、帰りのタクシーを一時間後に新薬師寺に迎えにと予約電話を頼みました。「はーい。奈良ではタクシーは流していないんですよ。」と教えてくれるママさん。

 新薬師寺では、ユルキャラ顔の薬師如来より、彩色復元で有名な婆娑羅大将をはじめとした日本最古の十二神将像がお目当て。家人は由緒ある寺院でその都度さしだす御朱印帳がつぎつぎと埋まりご満悦です。

 お迎えタクシーで東大寺へ向かいます。「なあんだ、車だとすぐ近いんだねえ。」でも暑いのでまず二月堂の門前茶屋でかき氷の宇治金時をいただきました。「おいし。今年の初ものね」「古都奈良で食べると本場感あるね、変だけど。」

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