C型肝炎ウイルスはどのようにして感染するか?

Q20:C型肝炎ウイルスはどのようにして人から人へ感染しますか?

 C型肝炎ウイルスは主に感染している人の血液を介して感染します。例えば、以下のようなことがあった場合には感染する危険性があります。

* 他人と注射器を共用して覚せい剤、麻薬等を注射した場合

* C型肝炎ウイルス陽性者が使った注射器・注射針を適切な消毒などをしないでくり返して使用した場合

* C型肝炎ウイルス陽性者からの輸血、臓器移植等を受けた場合

 また、以下の場合にも感染する可能性があります。

* 長期間にわたって血液透析を受けている場合

* 頻繁に血液に触れる(特に針刺し事故など)保健医療従事者の場合

* C型肝炎ウイルスに感染している母親から生まれた子供の場合(ただし、少ない)

* C型肝炎ウイルスに感染している人と性交渉があった場合(ただし、まれ)

* C型肝炎ウイルス陽性者の血液が付着したカミソリや歯ブラシを共用した場合

(「Q13」参照)

 

Q21:C型肝炎ウイルスは医療行為(歯科医療含む)で感染しますか?

 現在、日本で行われている医療行為(歯科医療含む)でC型肝炎ウイルスに感染する可能性はまれと考えられています。しかし、長期間にわたって血液透析を受けている方は、施設内での感染が発生しており、医療機関における感染予防が重要な問題となっています。

 

Q22:C型肝炎ウイルスは性行為で感染しますか?

 性行為で感染する可能性はまれとされていますが、他の性行為感染症の予防にも効果があるコンドームの使用をお勧めします。

 

Q23:C型肝炎は夫婦間で感染しますか?

 病院に通っているC型慢性肝炎、肝硬変、肝がんの患者さん150人の配偶者を調べたところ、このうちの21人(14%)がC型肝炎ウイルス持続感染者(HCVキャリア)であることがわかりました。また、献血時の検査で見つかった自覚症のないC型肝炎ウイルス持続感染者(HCVキャリア)50人の配偶者を調べたところ約12%が夫婦ともC型肝炎ウイルス持続感染者(HCVキャリア)であったという結果も得られています。しかし、夫婦に感染しているHCVの遺伝子を詳しく調べて遺伝子の配列を決め相互に比較してみると、そのほとんどでは一致しないことがわかりました(広島医学 47: 1660-1663, 1994)。

 この結果は夫婦間の感染ではなく夫婦それぞれが別々の感染源からHCVに感染したことを示しているといえます。

 つまり、たとえ配偶者がC型肝炎ウイルス持続感染者(HCVキャリア)であっても、ごく常識的な日常生活の習慣を守っているかぎり夫婦間での感染が起こることはほとんどないと考えてよいでしょう。

 しかし、上述の結果は、献血時や検診時の検査でC型肝炎ウイルス持続感染者(HCVキャリア)であることが初めてわかった人の配偶者は、念のためにHCV検査を受けておくほうが望ましいことを示しているともいえます。

 

Q24:C型肝炎ウイルスは家庭内で感染しますか?

 家庭内での感染可能性はまれといわれています。もし家庭内で感染が起こるとすれば、それは感染者の血液に直接触れたような時だけですから、歯ブラシやカミソリなどを共用するのはやめましょう。

 

Q25:C型肝炎ウイルス(HCV)は保育所、学校、介護施設などの集団生活の場で感染しますか?

 一般に、集団生活の場でC型肝炎ウイルス(HCV)の感染がおこることはないとされています。

 実際、ある会社において肝炎ウイルス検査を受診した者3,079人を3年間にわたって調べた結果、新たにC型肝炎ウイルス(HCV)に感染した人はゼロであったという結果が得られています。

 また、ある介護、福祉施設の入所者703人を4年間にわたって調べた結果、新たにHCVに感染した人はゼロであったという結果も得られています。

 なお、この703人の中には、25人のHCV感染者が、特定されないまま入所していたことがわかっています。

 これらの結果は、ごく常識的な日常生活の習慣を守っているかぎり、C型肝炎ウイルス持続感染者(HCVキャリア)であっても集団生活の場で他人にHCVの感染をおこすことはないことを示していると言えます(J. Epidemiol., 6: 198-203, 1996)。

 

Q26:C型肝炎ウイルスは輸血(血液製剤も含む。)で感染しますか?

 わが国では1989年11月に全国の日赤血液センターにおいてC型肝炎ウイルス(HCV)感染予防のための検査(HCV C1003抗体検査)が世界に先がけて導入されました。そして、その後の急速な進歩に合わせて、1992年2月からはより精度の高い検査(HCV抗体検査)にいち早く切り替えられたことから、輸血によるC型肝炎ウイルス(HCV)の感染はほとんどみられなくなりました。

 さらに、1999年10月からは核酸増幅検査(NAT)が全国的に導入されたことから血液の安全性は一段と向上しています。

 平成4年(1992年)以前に輸血(や臓器移植手術)を受けたことがある方は、当時はC型肝炎に感染している血液か否かを高感度で検査する方法がなかったことから、C型肝炎に感染している可能性が高くなっています。

 また、フィブリノゲン製剤の投与を受けた方(フィブリン糊としての使用を含む。)、又は昭和63年(1988年)以前に血液凝固第?、第?因子製剤の投与を受けた方は、これらの製剤の原料(血液)の検査、C型肝炎ウイルスの不活化が十分になされていないものがありましたので、C型肝炎に感染している可能性があります。

 上記に該当する方は、主治医に相談の上、C型肝炎の検査を受けることをお勧めします。

 フィブリノゲン製剤は、産科の疾患その他で出血が多かった方や、大きな手術をされた方に使われた可能性があります。フィブリノゲン製剤が使用された可能性がある疾患については、 http://www.mhlw.go.jp/houdou/0105/h0518-2a.html#betu1

をご参照ください。

 

Q27:血液製剤の安全性向上のためにどのような予防対策が取られていますか?

 現在、献血時の問診の強化や400ml献血、成分献血の推進の他に、分画製剤原料血漿の6ヶ月貯留保管などの総合的な安全対策が実施されています。

 また、献血された血液について、精度の高いC型肝炎ウイルス(HCV)のスクリーニング検査が行われ、安全性の向上が図られています。

 C型肝炎ウイルス(HCV)のスクリーニング検査については、1989年11月から世界に先がけてHCV C100−3抗体検査が導入され、輸血後C型肝炎の発生率はそれまでの8.7%から2%にまで減少しました。また、1992年2月からは、その後の研究の進歩に合わせて、より精度の高いHCV抗体検査に切り替えられたことから輸血型C型肝炎はほとんどみられなくなりました。

 さらに1999年10月からは、核酸増幅検査(NAT)が全面的に導入されたことから血液の安全性は一段と向上しました。

 しかし、核酸増幅検査(NAT)の検出感度は、現在、102コピー/ml前後であり、これ以上検出感度を上げることは検出系の構造から言っても困難な現状にあります。これに対して最近、チンパンジーを用いた感染実験により、感染初期(HCV抗体ができる前)の血清を用いた場合HCV RNAの絶対量として10コピーオーダーのC型肝炎ウイルス(HCV)を接種すると感染が成立することがわかりました。この結果は、感染後ごく早期(NATのウインドウ期)ではNATによってもウイルスが検出できずに見逃してしまうことがあることを示しているといえます。血液センターでは医療に必要な血液の安全性を高めるために献血されたすべての血液についていろいろなウイルス等の感染予防のために厳しい検査を行っています。しかし、上述のように感染のごく初期では検査でウイルスが見つからないため、その血液が輸血医療に使用され、患者さんにとって重大な結果を招いてしまう恐れがあります。こうした理由により、C型肝炎ウイルスやB型肝炎ウイルス、人免疫不全ウイルス(エイズウイルス)等の検査目的での献血は絶対に避けて下さい。

 また、厚生労働省では、輸血後にC型肝炎に感染していないかどうかを輸血後の一定期間(半年程度)内に検査を行い念のため確認するよう医療機関に対し求めていますので、輸血医療を受けた場合は、この確認検査を受診いただくようお願いします。

 

Q28:核酸増幅検査(NAT)とはどのようなものですか?

 核酸増幅検査(Nucleic acid Amplification Test:NAT)とは、標的とする遺伝子の一部を試験管内で約1億倍に増やして検出する方法で、基本的にはPCRと呼ばれているものと同じ検査法です。

 この方法をC型肝炎ウイルスの遺伝子(HCV RNA)の検出に応用すると、血液(検体)の中に存在するごく微量のHCVを検出できることから、感染早期で、まだHCV抗体ができる前(HCV抗体のウインドウ期)の人を見出すことができるようになり、またHCV抗体が「中力価」〜「低力価」陽性を示す人をHCVキャリアとHCVの感染既住者とに分けることができるようになりました。